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翳風(えいふう)のツボ|顔面神経と迷走神経、どちらが正しい?

ツボ治療や鍼灸を受けたことがある方なら、一度は耳にしたことがある「翳風(えいふう)」というツボ。さとう式リンパケアでもちょこちょこ登場する大切なツボの1つです。耳の後ろ側、ちょうど耳たぶの裏に位置するこのツボは、顔の痛みや耳の不調、ストレスの軽減など、さまざまな効果があるとされています。しかし、翳風がどの神経に働きかけて効果を発揮しているのかについては、異なる意見があります。今回は、「顔面神経」と「迷走神経」のどちらが翳風のツボの効果に関与しているのかをわかりやすく解説します。

翳風のツボとその位置

まず、翳風の場所について簡単に説明いたします。翳風は耳の裏、ちょうど耳たぶの後ろで、顎の付け根あたりに位置します。この場所を指で軽く押してみると、少しへこんだ部分があり、これが翳風のツボです。翳風は古くから、耳の不調(例えば、耳鳴りや難聴)、顎の痛み、顔の神経痛の緩和などに使用されてきました。

顔面神経と翳風の関係

翳風が「顔面神経」と関連しているという説は、解剖学的に最もよく知られています。顔面神経は、私たちの顔の表情筋を動かす神経です。例えば、笑ったり、しかめっ面をしたりするのは、この顔面神経のおかげです。また、顔面神経は耳の周りにも枝を出していて、耳の周囲の筋肉や皮膚の感覚にも影響を与えます。

翳風の位置は、顔面神経が走る経路の近くにあり、顔の筋肉や耳の周りの皮膚の感覚を司る部分にあります。そのため、翳風を刺激することで顔面神経が反応し、顔の筋肉の緊張が和らいだり、顔の痛みが軽減されたりすると考えられています。

迷走神経と翳風の関係

一方、「迷走神経(リラックスの神経)」との関連については、少し異なる視点が必要です。迷走神経は、頭から始まり、首、胸、そして腹部まで走る長い神経で、心臓や肺、消化器官など、多くの内臓器官に影響を与えます。また、迷走神経は耳の周辺、特に耳の後ろや外耳道の皮膚にも枝を出しており、これが「耳介枝」と呼ばれます。

翳風の位置は、迷走神経の耳介枝が分布する範囲に近いため、翳風を刺激することで迷走神経を通じて副交感神経(リラックスの神経)が活性化される可能性も考えられます。これにより、心拍数が下がったり、ストレスが軽減されたりするリラックス効果が期待できるとする説があります。

どちらが正しいのか?

では、「顔面神経」と「迷走神経」のどちらが翳風のツボの効果に関連しているのでしょうか?結論からいうと、解剖学的には顔面神経が主に関与していると考えられています。翳風は、顔面神経が走る経路に非常に近く、顔や耳の周りの症状の緩和に直接的な効果があるからです。鍼灸の公式教科書にも明記されています。

しかしながら、翳風を刺激することで得られるリラックス効果や全身の調整効果を考えると、迷走神経も間接的に関与している可能性があるともいえます。迷走神経は、体のリラックスを司る神経であり、耳周辺のツボを刺激することで、全身のリラックス感やストレス軽減効果が期待できるためです。

まとめ

翳風のツボがどの神経に作用するかという問いに対しては、「顔面神経」が主に正しいという解釈が一般的です。しかし、鍼灸やツボ刺激の効果が複合的であることを考慮すると、「迷走神経」もまた間接的に影響を与えます。ツボ刺激は、単一の神経だけでなく、体全体のバランスを整えるために多面的な影響を与える手法です。ですから、翳風のツボを使ったケアが、顔の痛みだけでなく、リラックス効果をもたらす理由もここにあるんですね。